2003年10月号

  高橋さんは、自然農法はいわゆる有機栽培農法とは違う路線にあり、有機栽培は慣行栽培から自然農法に至る一歩手前の段階だ、と捉えておられます。

  自然農法は農水省指導型の現在慣行栽培とは対極にあり、マニュアルがあっての仕事ではないため、自然界を師とします。

  健全な土壌を基礎として植物の営みに耳を傾け、自然界のエネルギー(太陽、月、地球)をフル活用しつつ農作業を進めていくというそのやり方には、「農の原点」なるものを感じました。

  それと同時に、めまぐるしく変化する、ここのところの地球環境とそこに暮らす我々、または子孫の未来の食卓を見据えたこれからの農業のあり方、というものも冷静に考えておられました。それは巷に飛び交う形骸化されたエコロジーではない、現在生態学の「生きたお手本」が高橋さんの、そこの畑でしっかり実践されているといったものでした。

  まるで美しい田園風景を見るかのように畑は整然としていて、その落ち着いた雰囲気の中にたたずんでいると、この複雑な問題を抱えた現代社会も、目に見えないサークルの上を何とか走り続ければ、この畑のような雰囲気を持った、約束された人間の土地に戻ってこれるものだろうか…。と一瞬の不安がよぎり、何か時代の重い十字架を背負わされた気分になりました。

  高橋さんのお話も、シンプル且つ、哲学的ですらあり、自らに「悩まずに考え抜け」という行為を呼び覚まさすかのようでした。

  百姓をやってきて本当によかったとおっしゃる高橋さんは、ご自身は百姓の百のうちまだまだ十姓くらいの者であり、これからも自然農法をやり続けられることの喜びを感じます。と確信に満ちた口調で語ってくださいました。

  20年前、一般の農業から自然農法という大海原に飛び込み、迷い、試作を続けながらようやく己の確信を得たその人生体験が、農作業で日焼けした肌とそのしまった体型から静かに伝わるのを、感じることができました。

  「ニクイけどイイ男だねー!あんた!!」高橋さん、貴重なお時間をどうもありがとうございました。

(吉祥寺店 尾崎)