2002年10月号

 八百屋で働いていると、季節の移り変わりや天候の変化をより身近に感じることができ、幸せだなあと思います。毎朝、新しく入った旬の野菜を並べながら「おいしそう〜〜」「いいにおい!」「おかしな形(大笑)!!!」と一番のりのお客さんになって喜んでいます。

 最近は、白菜、とうがん、栗、梨、新紅東などが入りはじめ、蓮根も常連野菜メンバーの一つとして復帰してきました。「はじめまして」「お帰り」と言いたくなる野菜に囲まれながら、逆に「もっと食べておけばよかった!」とさみしくなるのは、枝豆やゴーヤ、オクラがいっぺんにいなくなってしまったこと。お客さんからも「もうないのねえ」という声がよくきかれます。また美味しい季節までしばしおあずけですね。

 涼しくなって夏ばても終わりか、お客様のお買い物の量も増えたようです。最近はきのこが良く売れていて、そんなことからも秋を実感。お客様のお買い物の様子やお話から、多くの方がご自分の手で季節の野菜や食べ物を体調、お好みに合わせて選ばれ、調理されていることがわかります。そのこだわりといったら!時にお客様から野菜の美味しいいただき方を教わったりもします。ついさぼって自炊をおろそかにしてしまう私は、「見習わなくては」と思います。

 八百屋で働く以前は、季節や天候が自分の生活にそれほど結びついていませんでした。気温の変化、身の周りの木々花々は感じても、自分の生活の中にそれほどとりこまれていませんでした。冬でも夏のように、夏でも冬のように、雨でも晴れの日と同じようにすごせる、そんな便利な世の中で育ってしまったせいでしょうか。ですから、季節や天候に自然に対応し、生活に取り入れて楽しんでいくことにとてもあこがれています。

 季節は秋!実りの秋!今年は、自分で植えた稲の刈り取りなどをしました。5月に田植えに参加し、8月終わりに稲刈りをしたのですが、どちらも初体験でした。田植えで、「平気だ」と思いながらも、最初に泥沼に足を入れるのに思わずためらってしまったこと、でもすぐに稲を植えるのに夢中になって、泥んこまみれが気にならなくなったこと、その泥沼にはいろいろな虫や微生物がいたこと、こう書くと当然のことばかりですが、実際にそれがどういうことか、どう感じるのか、私は初めて体感しました。

 その稲を先月刈り取りました。最初は人の手で、途中から機械を使っても、きれいに刈りとり脱穀し終わるまでに数時間、予想より作業は楽ではありませんでした。けれど、地元の人に鎌の使い方・姿勢や、長く続けるこつを教わり、刈り取った藁のいいにおいを楽しんだり、植わっている稲の米はまだ半透明で柔らかく歯でつぶしてみたり、また楽しい発見がありました。その時の落穂を持ち帰り、人の手ですりばちとざるを使って脱穀してみたのですが、炊き上がりでご飯茶碗一杯弱分の米を玄米にするのに、数人で3時間ほどもかかりました。でも!その甘みとうまさに驚き!本当に感動ものでした。

 甘いご飯を噛みながら、日頃ただ出されたものを食べているだけでは、その食べ物がどういうものか、旬の美味しさや、ものの良し悪しなどに鈍感になってしまうのかもしれない、季節や天候、自分の体調と相談して、自分で食べ物を決めることは、豊かな生活には欠かせない大切なことなのだと改めて感じました。

 今年の実りの秋は、私にとって本当に「実って」いました。皆様にも実り多き秋でありますように!!  (荻窪本店 池田)