その9 文:稲津恒巳 |
| 私は4人の兄姉の末子として東京大田区の生まれですが、戦争の最中2才で父と死別し、繊細で一切の財産を失い母方の実家がある岡山県津山市で少年時代を過ごしました。
当時の貧亡人の小伜は田圃の畦道や野菜畑の道を通って学校に通っていた訳ですが、朝露にぬれたキャベツやトマト畑、大根やじゃがいも畑はそれぞれの野菜特有の香を発散させ、本当に気持の良い雰囲気を漂わせていました。 また実際に食してもそれぞれの味と香りがあり、強い野菜の個性を感じたものでしたが、長い時間の経過でいつの間にかその時代に感じた味や香りも忘れ、ただ少年時代の脳裡に焼きついたままだったのですが私が結婚し家庭料理を味わうようになって何か野菜に味がない、味が淡い、コクがないと思うようになったのです。 次回につづく |